相続放棄と未払いの公共料金
1 未払いの公共料金の法的性質
被相続人(お亡くなりになられた方)の名義で電気、ガス、水道などの契約がなされていると、お亡くなりになられた後に請求された電気代、ガス代、水道代は、被相続人の債務になります。
被相続人が生前に滞納していた場合も、被相続人の債務になります。
2 相続放棄の効果
相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったことになります。
これにより、被相続人の財産を一切取得できなくなりますが、被相続人の債務も一切負わずに済みます。
そのため、被相続人の未払いの公共料金についても、相続放棄をした相続人が支払う必要はありません。
3 実務上の取り扱い
⑴ 事業者への連絡
相続放棄をした事実は公表されません。
そのため、相続放棄をした旨を伝えないと、債権者は相続放棄をした事実を認識することができません。
相続放棄をした後は、電気、ガス、水道等の事業者に対し、相続放棄をした旨を伝え、必要に応じて相続放棄申述受理通知書の写しを提供します。
これにより、以降の請求を止めることができます。
⑵ 被相続人の自宅に住み続ける場合
住み続ける元相続人の方が、新たに電気、ガス、水道等の契約をする必要があります。
事業者からは、被相続人の解約手続きをするよう言われることがありますが、相続放棄をした方は、すでに相続人ではなくなっているため、被相続人の契約について、解約をすることができません。
この点についてはやや複雑なため、事業者の方に早急な理解を求めることは酷であるという側面があります。
そのため、丁寧な説明が必要になることもあります。
⑶ 相続放棄前に支払ってしまった場合
未払いとなっていた公共料金について、事業者の方に申し訳ないという気持ちもあり、支払ってしまうというケースも少なくはありません。
このとき、ご自身のお金で支払った場合は、問題ないとされます。
他方、被相続人のお金で支払った場合には、相続放棄が認められなくなる可能性が生じるという問題があります。
被相続人の財産の処分は、相続放棄が認められなくなる法定単純承認事由のひとつとされているためです。